ネクロポリス再読
- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2005/10/13
- メディア: 単行本
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7時に目が覚めて、晴れたので洗濯。さすがにこうも雨が続いた後の久々の晴れ間だと、ふせていたやる気も出てくるというもので。
夫が出勤する前に、洗濯物を干し終わり、炊きたてのご飯を詰め、読書に勤しんでました。
ちょうど10年前に出版された本でした。当時の読書記憶では、下巻の勢いの失速がとても後味悪い、とあったのでなんとなく遠ざけていて、その後なぜか上巻だけ古本で購入し家にありました。先日それをふっと読み返し、下巻が読みたくなっていたところでした。
本当に久しぶりに図書館の棚を見て、本を選び、貸し出しをできました。何も考えず、思い出さず、ただ読みたい本を探すことだけに集中したのが良かったのかなと。
で、朝も早よから読んでました。
イギリスと日本の文化や言葉遊びをうまく混ぜて創作したんだなという印象が最も強いです。多分、昔は気づかなかった。
でも夜の底は〜に少し感覚が似てるなな。日本語をカタカナ表記するところや、オチが緩いところも…。
設定としてはとても面白くて興味深く、この丘をめぐる物語を他にも作れるのではと思うほど。昔に読んだときの記憶で、下巻のボートに乗って川を下るシーンが強く印象に残っていたんですが、それが何のシーンだったかは覚えていなかったので、今読んで納得。
以下、箇条書き
- 恩田さん、丘好きだよね。球形の季節も丘だし。
- 「〜かしらん。」が使われていて不思議な懐かしさ。
- るーみっく作品にも見られる特徴だけど、恩田さんも中国や日本古代の文化や宗教、言い伝えなんかが創作意欲の元になる人なんだろう。
- 時折出てくる東京の彼女は、何かの伏線だったんだろうか?
- 眼球、血まみれジャック、八つ裂きの雨合羽、グロ要素は散りばめられていたけど、きっと、ホラーとスプラッタとミステリーの関係性とバランスはとても絶妙なんだろう。だってスプラッタがないホラーのほうが怖い。この物語の本当の怖さが血まみれジャックではないように。
- 「お客さん」と生きてるものが当たり前に交流するこのアナザーヒル自体が、笑えるホラーなんだ。だから惹かれる。だから読む。
- 謎を纏ったものは、真実をさらけ出しているものより魅力的に感じる。宗教、禁忌、機密、神話、伝統、理屈じゃないこと。近代的、合理的、機械的じゃないこと、や、もの。
- 『わたしの家では何も起こらない』も英国舞台だったような。恩田さんはスプラッタホラーよりも、伝統と禁忌を重んじる、見えないものを信じるその畏怖こそがもっともミステリーだと書き示す人だ。霧の都ロンドン、ゴーストに寛容な国柄、同じ島国としての親近感。イギリスは、アメリカとも中国とも違う距離感がある。
- 昔英語の授業で教授に「アメリカに古代なんてないよ!」と笑われたことがある。あそこはピカピカで、血にまみれていて、合理化と近代化、理論と理屈、理性とお金で構成された国。あの国には、禁忌も、畏怖も、聖地もない。すべてが闇から引きずり出されて、さらけだされている。
- ネクロポリスって結局なんだったんだろう?本編に出てこなかったけど。
- 最近の著作と比べても昔のほうがまだ、オチがまだマシだったような。夜の底は〜と、雪月花黙示録のオチはひどかったもの。
- そしてお酒が飲みたくなる物語。
ブラックベルベットはまだ予約待ちですが、図書館に行けるようになったのでこれからガンガン本を読みたい。
読書の秋!